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2024/11/22 18:23 |
●『君に届くなら』 ~My dear, My Angel~
 遅れましたが、ようやくできましたビリ誕ネタ…! しかも久し振りの可愛いあの子です。ほんと久し振りなんで書き始めは少々戸惑ったけれど、途中からノってくるとやっぱり楽しく書けたよ。後半は例のごとくいつもの彼らとなりますが。

 というわけで、もしかしたらオンでは初公開でしょうか。コピー本にて展開中のグラハム母子×ビリー父子設定な義兄弟話『My dear, My Angel』シリーズの、12歳グラハム×16歳ビリーです。『空も飛べるはず』の少しあとの二人。12歳グラハムが軽くオリキャラですが、深く気にしてはいけません(汗)



*







「どうかしたの?」
 グラハムがビリーの部屋を訪れたのは、もう日も変わろうかという時間、ビリーがベッドに潜り込んで眠気を待ちつつ本を読んでいたときのことだった。
「眠れなくなった?」
 何気なく零れた言葉に、グラハムは少しだけ驚いたような顔をして、けれどふるふると首を横に動かす。
 グラハムがこうして深夜にビリーの部屋を訪れることは、実はそう珍しいことではなかった。頻繁といえるほどでもなかったが、半年ほど前からたまに眠れないときや寝付けないときにグラハムはこうしてビリーの部屋を訪れ、眠れるようになるまで話をしたり、場合によっては一緒のベッドで眠ってしまうこともあった。
 しかし今のグラハムに不安定な様子はないし、眠れなくなるほど興奮するような出来事があったわけでもない。
 では一体なにがあったのか、グラハムがこんな時間にビリーの部屋を訪れる理由が思い当たらず、ビリーは首を傾げて扉の前に立ち尽くす少年を見やる。
 まだ幼い12歳の少年は、なにをするでもなくそこに立っていた。ベッドから身を起こして、ビリーは彼の行動を待つけれど、グラハムはなにも語らずただビリーの部屋にいるのみだった。
 こんなことは初めてで、ビリーはどうしたものかと首を傾げる。ときどき、手の中のなにかを気にするようなそぶりを見せるのは、グラハムの不可解な行動の理由となるのだろうか。
 眩いばかりのやわらかな金の髪、澄んだ真っ直ぐな碧の瞳。明るく素直で、迷うことなく進んでいくグラハムの、迷いとも違うこんな様子はビリーも見たことはない。
「グラハム……?」
 さて、どうしたものか。グラハムは動こうとしないし、これでは膠着状態のまま時間が過ぎてしまう。
 だからせめて立ち尽くすグラハムを座らせるくらいはしてやらなければと、ビリーがベッドから抜け出そうとしたそのときだった。
「ビリー」
 ふいに、グラハムはビリーへ真っ直ぐに顔を向けた。ベッドから片足だけを下ろした中途半端な状態で、ビリーが顔を上げるとグラハムと視線がかちあう。
「え?」
「誕生日、おめでとう」
 それだけだった。それだけの言葉、だった。
 グラハムは表情の読めない顔でビリーだけを見据えてそう呟いた。呆気にとられたビリーは、ただグラハムを見上げることしかできなかった。
「……あ、ありがとう」
 なんとかありきたりな台詞だけでも絞り出すと、グラハムは笑った。ビリーもよく見る、花の綻ぶような笑みだった。彼の母であるマリアによく似た、なににも代えがたいうつくしいグラハムの笑顔だった。
「それだけ、云いたかったんだ」
 言葉の通りにそれだけを伝えたグラハムは、どこか楽しげに笑って扉に手をかける。音を立てずに扉の向こうに身を滑らせ、けれど閉める直前に顔を覗かせ、
「大好きだよ、ビリー」
 悪戯が成功したかのような顔で、そうしてグラハムは自室へと戻っていった。
 無意識に張り詰めさせていたらしい緊張の糸が切れ、ビリーは背中からベッドへと倒れこんだ。首だけを動かして、ベッドサイドの時計と机の上のカレンダーを見やる。
 4月24日。確かに『今日』はビリーの誕生日だ。
 認識はしていたが、誕生日を最初に祝われるのは毎年朝食の席であったから、すっかり油断していた。というよりも、『昨日』から続いていた時間がいつの間にか『今日』になったとて、時計を見ていなかったビリーからすると『今日』もまだ『昨日』のままだ。
 それをわかったうえでのサプライズなのだとしたら、まったく小粋なことをしてくれるとは思うが、けれど小さなグラハムのことだから、きっと一生懸命考えてやってくれたことなのだろう。
 一番最初に、ハッピーバースデイを伝えたいと思うこと。それはビリーにも覚えのある感覚だった。
 可愛いと思う。愛しいと思う。
 グラハムはおそらく、『今日』の朝食の席でマリアや父と一緒に何食わぬ顔でビリーにおめでとうと云うのだろう。先刻のことなどなかったかのように、振舞うのだろう。
 だからビリーも、片づけをするときにでもグラハムにだけ囁いてやろう。
「ありがとう、グラハム。――大好きだよ」
 と、何事もなかったかのような顔で。











「……本当に、昔は可愛かったよね」
 やってることは同じだけど。
 日付が変わると同時にベッドに突き飛ばされのしかかられた状態で、ビリーは深々と溜息をついた。
 グラハムの様子と状況からしてなんとなく予測はついていたが――というより、もしかしなくともグラハムの中ではこれも最初から予定されていたことなのだろう――日付が変わった瞬間にこれか。
 毎年毎年飽きもせずによくやる、とは思う。それに付き合っている自分も大概だとは思うけれど。
 血の繋がらない弟であり年下の恋人でもあるグラハムは、いそいそとビリーの服を脱がしていく。
 昔は純真で可愛らしいばかりだったグラハムも、いつしか立派な青年になり大人の男となっていた。二十代に上がる前と今とで身長こそあまり変わりはないけれど、それでもよくぞここまでと思えるだけの男にはなっていたのは、少年時代を知るビリーからすると驚きの一言でしかない。
「君こそ、相変わらず身持ちが固くてなによりだ」
 ベッドの上で男同士で絡み合って脱がせあっているというのに一体なにを云っているのだろう。
 それに、軍に入ってから今までまともに恋人ができなかったのは、あくまで仕事に精を出していたからであってグラハムに操立てしていたわけではない。
 人を排除していたわけではないが、人と深く付き合うことはそう多くなかった。グラハムがその頃のビリーを揶揄していることは理解できた。
 しかしながら、学生時代には一応恋人らしき存在もいないことはなかったのだ。ままごとのような恋だったけれど。
 そしてなにより、
「……君には、甘かったつもりだけど?」
「熟知している」
 その甘さが命取りになったのだと、今になってようやく理解できる。
 けれどそんな自分を嫌いになれないあたり、やはり自分はグラハムに甘すぎるのだと、熱い衝動に呑み込まれ朦朧となる意識の隅でビリーは思う。
 堕ちる先に見えるのは、眩いばかりの太陽の色。



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2008/04/27 14:23 | Comments(0) | 義兄弟グラビリ

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