ドラマCD2でグラビリの出逢いは出てしまったので、今となってはもうパラレルとなってしまうような妄想ネタですが、ネタメモ漁ってたら出てきたので晒してみる。他の細かいネタは多分他の話にも紛れ込ませることがきそうなんだけど(現に『さよなら~』はいくつか没になりかけたネタが練り込んであったりなかったり)、出逢い編だけはね…ということで。
*
「いかがでしたか、地上から見たフラッグは」
金の髪の青年は、真っ直ぐにビリーを見据えて足を進めてきた。
周囲には様々な人間がいる。彼がすぐに声をかけるべき相手は何人だっているはずだ。
しかし彼はビリーだけに視線を向け瞳を見つめたままビリーに語りかけた。
「素晴らしかったです、とても。今まで見たどの機体よりも美しい曲線を描いていた」
「それはよかった。あなたのような人に初のフライトを見ていただけて、フラッグも幸せ者だ」
――その瞳は、純粋なまでの碧。
「ああ、自己紹介がまだでしたね。私はグラハム・エーカー少尉。ご覧いただいた通り、フラッグのテストパイロットを勤めさせていただいています」
「君が――」
名も顔も、確かにビリーがよく知るものだった。実物に会ったのは初めてだが、彼のデータなら細部まで熟知している。
よく見る顔と同じであるし、テストパイロットが彼であることは承知の上で今日に臨んだというのに顔を見て気づかなかったのは、生きた人と静止画像の根本的な違いを今まで意識するようなことがなかったからだ。
真面目にレンズを睨みつける表情からは、今目の前にいる彼のような溢れんばかりの生気は伝わってこない。思えば瞳の光の強さは写真からもよくわかったが、それでも実物には敵うものではなかった。
彼は――グラハム・エーカーのあり方は、先刻のフラッグの舞う姿そのものだった。
「……? 私がなにか?」
思わずぼうっと見呆けてしまったビリーに、グラハムは穏やかな笑みを崩さず首を傾げる。
「いえ。――あなたのことはよく知っていますよ。お会いできて光栄です、エーカー少尉」
左手を差し出しながらビリーもまたグラハムに笑みを投げかける。
「僕はビリー・カタギリといいます」
ビリーの左手に驚いたような顔をしたグラハムは、続いた言葉に今度は明確に目を丸くした。
「あなたが!」
まさかいち技術者の名まで知っているとは思わなかったビリーは、強く握られた左手を思わず見下ろした。
パイロットとしてはとても優秀なその左手は、しかし平均的な体力しか持ち得ないビリーには強すぎる力を与えてくれる。
顔をしかめてしまったのか、それとも驚いた顔をどうとったのかは知らないが、グラハムはビリーの表情を見上げて慌てたように手を離す。
「失礼。嬉しくなってしまったもので、つい」
「いえ、まさか僕の名前をご存知とは思わなくて」
「フラッグを愛する者であなたを知らない者などいませんよ、カタギリ博士」
「そんな、」
「私のフラッグの生みの親。あなたがいたから、私はフラッグに出逢うことができた」
まるで最愛の恋人を思うかのようにグラハムは表情を綻ばせる。
トレーニングや演習を重ねてきたとはいえ、あの短時間でフラッグを自らのもののように語る姿はいかにも自信に満ちあふれていた。ああ、彼はこんな人間なのか。そう思った。
誰よりもフラッグを愛し、フラッグに愛される男。きっとそれが、グラハム・エーカーなのだ。
元々は、『恋するみたいに君が好き。』とかいうベッタベタな話の冒頭にくるはずだった出逢い話でした。結局、一部ネタをくり抜いてまとめて無料配布ペーパーにしてみたり、上記の話のビリーの過去話は別の話に入れてみたりもしてたかな。
……いかに行き当たりばったりでやりたい放題やってたかよくわかりますね(笑)
一応この話では、ビリーはフラッグ開発チームのひとりではありますがメインではない(と本人は思っているけど周囲の認識は違う)ようです。テストパイロットのグラハムとも実際は会ったことがなくて、ずっと研究室にこもってたみたい。フラッグお披露目のときに初めてテストパイロットのグラハム・エーカーと顔を合わせて――というのが、このネタの基本設定のようですよ。なんだかんだで、ビリーはグラハムにめろめろでグラハムはフラッグにぞっこん、というのはどこまでも変わらないんだなぁ。喜ばしいことです。
「いかがでしたか、地上から見たフラッグは」
金の髪の青年は、真っ直ぐにビリーを見据えて足を進めてきた。
周囲には様々な人間がいる。彼がすぐに声をかけるべき相手は何人だっているはずだ。
しかし彼はビリーだけに視線を向け瞳を見つめたままビリーに語りかけた。
「素晴らしかったです、とても。今まで見たどの機体よりも美しい曲線を描いていた」
「それはよかった。あなたのような人に初のフライトを見ていただけて、フラッグも幸せ者だ」
――その瞳は、純粋なまでの碧。
「ああ、自己紹介がまだでしたね。私はグラハム・エーカー少尉。ご覧いただいた通り、フラッグのテストパイロットを勤めさせていただいています」
「君が――」
名も顔も、確かにビリーがよく知るものだった。実物に会ったのは初めてだが、彼のデータなら細部まで熟知している。
よく見る顔と同じであるし、テストパイロットが彼であることは承知の上で今日に臨んだというのに顔を見て気づかなかったのは、生きた人と静止画像の根本的な違いを今まで意識するようなことがなかったからだ。
真面目にレンズを睨みつける表情からは、今目の前にいる彼のような溢れんばかりの生気は伝わってこない。思えば瞳の光の強さは写真からもよくわかったが、それでも実物には敵うものではなかった。
彼は――グラハム・エーカーのあり方は、先刻のフラッグの舞う姿そのものだった。
「……? 私がなにか?」
思わずぼうっと見呆けてしまったビリーに、グラハムは穏やかな笑みを崩さず首を傾げる。
「いえ。――あなたのことはよく知っていますよ。お会いできて光栄です、エーカー少尉」
左手を差し出しながらビリーもまたグラハムに笑みを投げかける。
「僕はビリー・カタギリといいます」
ビリーの左手に驚いたような顔をしたグラハムは、続いた言葉に今度は明確に目を丸くした。
「あなたが!」
まさかいち技術者の名まで知っているとは思わなかったビリーは、強く握られた左手を思わず見下ろした。
パイロットとしてはとても優秀なその左手は、しかし平均的な体力しか持ち得ないビリーには強すぎる力を与えてくれる。
顔をしかめてしまったのか、それとも驚いた顔をどうとったのかは知らないが、グラハムはビリーの表情を見上げて慌てたように手を離す。
「失礼。嬉しくなってしまったもので、つい」
「いえ、まさか僕の名前をご存知とは思わなくて」
「フラッグを愛する者であなたを知らない者などいませんよ、カタギリ博士」
「そんな、」
「私のフラッグの生みの親。あなたがいたから、私はフラッグに出逢うことができた」
まるで最愛の恋人を思うかのようにグラハムは表情を綻ばせる。
トレーニングや演習を重ねてきたとはいえ、あの短時間でフラッグを自らのもののように語る姿はいかにも自信に満ちあふれていた。ああ、彼はこんな人間なのか。そう思った。
誰よりもフラッグを愛し、フラッグに愛される男。きっとそれが、グラハム・エーカーなのだ。
元々は、『恋するみたいに君が好き。』とかいうベッタベタな話の冒頭にくるはずだった出逢い話でした。結局、一部ネタをくり抜いてまとめて無料配布ペーパーにしてみたり、上記の話のビリーの過去話は別の話に入れてみたりもしてたかな。
……いかに行き当たりばったりでやりたい放題やってたかよくわかりますね(笑)
一応この話では、ビリーはフラッグ開発チームのひとりではありますがメインではない(と本人は思っているけど周囲の認識は違う)ようです。テストパイロットのグラハムとも実際は会ったことがなくて、ずっと研究室にこもってたみたい。フラッグお披露目のときに初めてテストパイロットのグラハム・エーカーと顔を合わせて――というのが、このネタの基本設定のようですよ。なんだかんだで、ビリーはグラハムにめろめろでグラハムはフラッグにぞっこん、というのはどこまでも変わらないんだなぁ。喜ばしいことです。
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