ドラマ本編未視聴のため、設定だけ借りたまま突っ走りますー。色々とぐちゃぐちゃなのはご愛敬(笑)
せっかくビリーの誕生日なのに書きあげられたのがこっちのネタでごめんねビリー……
*
夫であるエイフマン教授の死後、教授の私設秘書だったハワードに連れられて向かった先は、古代の城のような屋敷だった。
時代錯誤もいいところな屋敷の中を進んでいくと、ちょっとしたパーティでもできそうな広間へと出た。豪華なシャンデリアやらやたらと長いテーブルやらに唖然としていた僕は、僕に向けられていた複数の視線に気づくことに遅れてしまっていた。
「……ええと?」
その広間にいたのは、僕とハワードを除けば四人。
「へぇ、あんたが俺らの母親ってやつか」
一人目は、その中では一番の年長者だろう青年。綺麗な顔立ちと、澄んだエメラルドの瞳が印象的で、僕を見て興味深そうに笑っていた。
「あなたは、……その、なんというか、物好きな人ですね」
二人目は、もう少し若いだろう少年で、穏やかそうな顔をしてどこか困った風に笑いながら僕を見ていた。
「僕はあなたを認めないし、認めるつもりもない」
三人目は、女の子かと思うような綺麗な顔をしていたけれど、僕を見る視線の厳しさは確かに男の子で、怒ったような顔でこちらに視線を向けていた。
「あんたは誰だ」
四人目の子は、おそらく彼が最年少だろうと思うのだけど、こちらもどうにも読めない表情でただ真っ直ぐ僕の方を向いていた。
なんとも居心地の悪い空間に、けれど僕はまさかと思い立つ。
もしかして、まさか。
「そうです。彼らが、エイフマン教授の息子さんたちです」
「ええええっ!?」
だって容姿もこんなにみんな違うのに。
そう考えて驚いた僕の思考は筒抜けだったのだろう、ハワードは困ったように笑って説明をしてくれた。
彼らは故あってエイフマン教授が養子とした子どもたちなのだという。だからエイフマン教授と彼らはもちろんのこと、彼ら同士も血の繋がりは一切ない赤の他人だとか。
彼らがビリーの息子であり、ビリーはこの屋敷で彼らと共に暮らし彼らの母親にならなければならない、と続けてハワードは云った。
それが教授の最後の願いだったのですよ。
そう云われてしまえば、僕に断る術なんてない。
さして年齢も離れていない初対面の男四人と暮らすことになって、しかもどういうわけか僕が母親役をやるなんて馬鹿げていると思ったけれど、それでもこれが教授の願いなんだ。
教授がどういうつもりで彼らを養子にして僕と結婚して、どういった意図で僕と彼らを出逢わせ、僕が彼らの母親になることがどんな結果を導くのか、そんなことは僕にはわからない。
わからないけれど、それでも僕は、
「――諸君、待たせたな!」
広間へと響いた朗々とした声はいやに爽やかで、ちょっとばかりセンチメンタルになっていた僕の気持ちをあっさりと霧散させてくれた。
振り返った僕の視線の先にいたのは、金の髪の少年で。まるで天使みたいな色合いのその子は、きらきらと目を輝かせて僕の前までやってきた。
「待っちゃいないが、遅いぞグラハム」
「なに、全ては結果が物語っているだろう、ライル。……それにしても」
ライルと呼ばれたのが四人の中での年長者で、最後に現れた彼はグラハムと呼ばれていた。
グラハムが僕を見る。まるで値踏みでもされるような目に、僕は一歩後ずさりそうになったけれどすんでのところでこらえてみせた。
こらえる。それはそうだろう。
だって僕がここにいることを教授が望んだのだから。教授が、僕にここにいてほしいと考えていたのだから。
だから僕は、逃げたくなる心を抑えて彼の目を見返した。こんなところで押されるわけにはいかないんだ、僕は。
「君が私たちの母親か」
「そう、らしいね」
「名は?」
「……ビリー。ビリー・カタギリ」
「ビリーか、いい名前だな」
「それはどうも」
「私はグラハム・エーカーだ。突然だがビリー」
「え?」
「義父が死んで間もないところに申し訳ないとは思うが、私と結婚してはくれないだろうか」
「……は?」
逃げれば良かったと、本気で思ったのはその瞬間だった。
夫であるエイフマン教授の死後、教授の私設秘書だったハワードに連れられて向かった先は、古代の城のような屋敷だった。
時代錯誤もいいところな屋敷の中を進んでいくと、ちょっとしたパーティでもできそうな広間へと出た。豪華なシャンデリアやらやたらと長いテーブルやらに唖然としていた僕は、僕に向けられていた複数の視線に気づくことに遅れてしまっていた。
「……ええと?」
その広間にいたのは、僕とハワードを除けば四人。
「へぇ、あんたが俺らの母親ってやつか」
一人目は、その中では一番の年長者だろう青年。綺麗な顔立ちと、澄んだエメラルドの瞳が印象的で、僕を見て興味深そうに笑っていた。
「あなたは、……その、なんというか、物好きな人ですね」
二人目は、もう少し若いだろう少年で、穏やかそうな顔をしてどこか困った風に笑いながら僕を見ていた。
「僕はあなたを認めないし、認めるつもりもない」
三人目は、女の子かと思うような綺麗な顔をしていたけれど、僕を見る視線の厳しさは確かに男の子で、怒ったような顔でこちらに視線を向けていた。
「あんたは誰だ」
四人目の子は、おそらく彼が最年少だろうと思うのだけど、こちらもどうにも読めない表情でただ真っ直ぐ僕の方を向いていた。
なんとも居心地の悪い空間に、けれど僕はまさかと思い立つ。
もしかして、まさか。
「そうです。彼らが、エイフマン教授の息子さんたちです」
「ええええっ!?」
だって容姿もこんなにみんな違うのに。
そう考えて驚いた僕の思考は筒抜けだったのだろう、ハワードは困ったように笑って説明をしてくれた。
彼らは故あってエイフマン教授が養子とした子どもたちなのだという。だからエイフマン教授と彼らはもちろんのこと、彼ら同士も血の繋がりは一切ない赤の他人だとか。
彼らがビリーの息子であり、ビリーはこの屋敷で彼らと共に暮らし彼らの母親にならなければならない、と続けてハワードは云った。
それが教授の最後の願いだったのですよ。
そう云われてしまえば、僕に断る術なんてない。
さして年齢も離れていない初対面の男四人と暮らすことになって、しかもどういうわけか僕が母親役をやるなんて馬鹿げていると思ったけれど、それでもこれが教授の願いなんだ。
教授がどういうつもりで彼らを養子にして僕と結婚して、どういった意図で僕と彼らを出逢わせ、僕が彼らの母親になることがどんな結果を導くのか、そんなことは僕にはわからない。
わからないけれど、それでも僕は、
「――諸君、待たせたな!」
広間へと響いた朗々とした声はいやに爽やかで、ちょっとばかりセンチメンタルになっていた僕の気持ちをあっさりと霧散させてくれた。
振り返った僕の視線の先にいたのは、金の髪の少年で。まるで天使みたいな色合いのその子は、きらきらと目を輝かせて僕の前までやってきた。
「待っちゃいないが、遅いぞグラハム」
「なに、全ては結果が物語っているだろう、ライル。……それにしても」
ライルと呼ばれたのが四人の中での年長者で、最後に現れた彼はグラハムと呼ばれていた。
グラハムが僕を見る。まるで値踏みでもされるような目に、僕は一歩後ずさりそうになったけれどすんでのところでこらえてみせた。
こらえる。それはそうだろう。
だって僕がここにいることを教授が望んだのだから。教授が、僕にここにいてほしいと考えていたのだから。
だから僕は、逃げたくなる心を抑えて彼の目を見返した。こんなところで押されるわけにはいかないんだ、僕は。
「君が私たちの母親か」
「そう、らしいね」
「名は?」
「……ビリー。ビリー・カタギリ」
「ビリーか、いい名前だな」
「それはどうも」
「私はグラハム・エーカーだ。突然だがビリー」
「え?」
「義父が死んで間もないところに申し訳ないとは思うが、私と結婚してはくれないだろうか」
「……は?」
逃げれば良かったと、本気で思ったのはその瞬間だった。
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