というわけで、グラハムお誕生日おめでとう!ネタです。
ものすごくお久し振りの、グラビリ義兄弟ネタ。しかも、グラハム父子×ビリー母子設定です。詳細は右にあるカテゴリーの「義兄弟グラビリ」からどうぞ。
去年のビリ誕はグラハム母子×ビリー父子ネタでしたが、今年のグラ誕はこっちにしてみました。……というか、まあぶっちゃけ今日の朝、自転車乗りながら「ぐらたんどうすっかー」とか考えてたら唐突に思いついた
ってだけなんですけどね(笑) ああでもすっごい楽しかった!
*
今日は、グラハムの誕生日だ。
だからなにもかもが平穏無事に済むとは到底思っていなかった。グラハムという血の繋がらないビリーの可愛い弟は、その見かけとは裏腹に突然とんでもないことをしでかすビリーからすれば理解不能な少年だった。
決して悪い子ではないのだ。とても優しくいい子で、要領もよくビリーに懐いてくれてもいる。
ときたま驚かされるような言動をされたり、多少強引であったりはするけれど、グラハムと過ごす毎日をビリーは確かに楽しんでいたのは事実だ。
グラハムの父とビリーの母が、共に子連れで再婚してからだいぶ経つ。この両親は、仲は良いのだが二人ともがビジネスライクであり、時間が合えばしょっちゅうのように二人でデートをしているが反対に仕事が入れば家にさえ寄り付かなくなってしまう。
互いにそれを承知しての再婚だったから、こんな日が来るのも想像には難くなかったけれど。
まさかグラハムの誕生日に、両親が共に仕事で家に帰れなくなるだなんて。
祝い事となれば全力で楽しみ尽くす義父のジョージと、節目となる日を大切にしようという考えを持つ母のリナが揃えば、誕生日などは格好のイベントのはずだった。
だというのに。
「プレゼント、本当にいいのかい?」
ビリーとグラハムは、四つの椅子に囲まれたダイニングテーブルに二人で座り向かい合っていた。
両親のいない、二人きりの誕生日。主役はグラハム、そして祝う人はビリーだけのささやかなバースデーディナーだった。
料理は昨日のうちにリナが腕によりをかけて作ったものだ。明日は仕事が入っていてお祝いができないから、せめて料理だけでもと、偶然にも同じように休暇を取れたジョージと共にキッチンに立っていた。
どうせ家族が揃うのならば前日でもいいから家族全員で祝ってやればいいのにとビリーは思ったが、グラハムのためを思って『誕生日のディナー』を作る二人に応援の言葉以外をかけることはできなかった。
だからビリーは、ジョージが予約をしてくれたケーキを当日に取りに行く役を引き受けた。
ビリー自身は、グラハムに対してプレゼントを用意していない。自分たちの関係は決して浅くはないが、ビリーはどんなプレゼントでグラハムが喜んでくれるかわからなかったから。
そしてなにより、
『そんなものはいらない。私の誕生日を、共に祝ってくれるならばそれだけで充分だ』
――他ならぬグラハム自身が、そう云ったから。
それゆえに、ビリーはこの日なんの予定も入れず、講義が終わったその足でケーキを引き取りに行き、帰ってからはディナーの準備に勤しんでいたのだ。
けれどいざ夕食の席に到ったときになって、両親の渾身の料理を前に戸惑いを覚えた。今ここにいない両親が、ここにいることができないからこそこれほどまでにグラハムへの愛情を込めているというのに、ここにいる自分がなにもしないというのはどうだろうか、と。
グラハムの前で、グラハムの誕生日をここで祝ってやれる唯一の人間がビリーなのだから、グラハムを喜ばせるなにかをすべきではないのだろうか、と。
そう思ったからこそ出たのが、この問いなのだけれど。
「……私は今、充分に楽しいが?」
グラハムはチキンのソテーを口に運びながら疑問符を浮かべていた。
彼にとっては唐突すぎる問いだったのだろう、不思議そうな顔で、けれど可愛らしく首を傾げていた。
「だって僕はなにもしていないよ。君の誕生日を祝いたいと思う気持ちは僕も変わらないのに」
ビリーがしたことは、全て両親の準備があってこそのものだった。グラハムのために、ビリーが自らしたことはひとつもない。その事実に、行き当たってしまった。
「そうか。……そうだな」
グラハムは不可思議そうな表情でビリーを見つめていたけれど、思いついたように目を瞬かせるとナイフとフォークをゆっくりと置いて皿の手前で緩やかに手を組んだ。
「では、来年もまた私の誕生日を祝ってほしい」
「それだけ?」
「ああ。私にとって君からの祝福は女神のそれ以上に素晴らしく得難いものなのだから」
溢れんばかりの笑顔を浮かべ、ところによれば天使のようだと称されるほどの可愛らしい顔立ちの少年は、今はその愛らしさをビリーにだけ向けていた。
不思議なことに、この美しい弟はビリーのことをどうしてか大層気に入っていた。初めて会ったそのときから、それは自惚れではなく確かな実感としてビリーの中にあった。
「大袈裟だなぁ。誕生日を祝うくらいなら毎年してあげるのに」
理由などはわからない。わかるはずもないのだけれど。
「確かな約束がほしいのだよ」
それでも彼が、鮮やかな笑みの中でもどこか真剣な瞳でビリーにそう云ってくるものだから。
「わかったよ、約束する」
些細な約束事に、どうして躊躇する必要があるだろう。愛しい弟がそう望むのならば、兄として応えてやるのが当然だと思っていた。事実彼の望みは、ビリーにとってそう難しいことでもなかったから。
そうして零れる満面の笑みに、ビリー自身もまた幸せを感じることができるのだから。
その日は、日が沈んでからあとは全てがグラハムにとってのプレゼントだった。
もちろんビリーは知るはずがない。このディナータイムそのものが、グラハムが両親にねだったプレゼントだということを。
渾身のバースデーディナーを作り上げていった両親は、今頃デートを満喫していることだろう。
ギブアンドテイクというものだ、決して難しい話ではない。互いに愛しい人と過ごす時間が欲しかった、ただそれだけのことだ。
「プレゼント、本当にいいのかい?」
そんなことを露とも知らないグラハムの愛しい義兄が、悩める顔でそんなことを云ってきたときには天にも昇る気持ちだった。
――あなたの存在そのものが自分にとってのプレゼントだ、なんて。
そう伝えられるほどに機は熟していない。まだその時期ではないことは、グラハムが一番よくわかっていた。
「だって僕はなにもしていないよ。君の誕生日を祝いたいと思う気持ちは僕も変わらないのに」
ビリーはなにもわかっていない。グラハムとジョージがよく似た親子だと指摘しながらも、その実本質を捉えきれていない。
けれども、まあ、それこそがビリーだと思えば抜けた様さえ可愛らしく映ってしまうのだから不思議なものだ。
グラハムと父のジョージはよく似ている。不本意ながら、それはグラハムの長くはない人生からしても認めざるを得ないものだった。
しかし、似ていても決して同じではない。
だからこそ、ジョージはリナに、グラハムはビリーに心を奪われた。グラハムとしてはリナのことは女性として好ましいと思っているが、それでもグラハムが惹かれたのはビリーに他ならないのだから。
「では、来年もまた私の誕生日を祝ってほしい」
「それだけ?」
「ああ。私にとって君からの祝福は女神のそれ以上に素晴らしく得難いものなのだから」
ビリーは一瞬だけ呆けたような顔して、すぐに照れたように微笑んだ。
ああ、そんなほんの僅かな表情の変化さえ、抱きしめたくなるほどに愛らしいというのに。
「大袈裟だなぁ。誕生日を祝うくらいなら毎年してあげるのに」
それでもビリーにとって、グラハムは仲の良い義理の弟であることに他ならなかった。気を許してくれてはいるが、あくまでそれは家族であり兄弟である以上のものではなかったけれど。
「確かな約束がほしいのだよ」
いいのだ、今はまだ。
彼の可愛い弟であるということ。今のこの位置自体には満足しているが、現状に甘んじるつもりはない。
いつか奪ってみせる。彼の隣を、自分だけの特別な場所を。そして、彼の全てを。
「わかったよ、約束する」
その笑顔がいつしか自分だけに向けられる特別な意味を含むように。
願いを込めるように、祈るように、グラハムは彼の眼を真っ直ぐに見据えて微笑んだ。
この一瞬から、少しずつでいい、彼の心を自分だけのものとするために。
誕生日なのに関係としては進み始めでごめんねグラハム!(笑)
でもこの人らはなんか勝手に幸せになってくれそうなイメージなので気楽に書けてほんと楽しいです。
今日は、グラハムの誕生日だ。
だからなにもかもが平穏無事に済むとは到底思っていなかった。グラハムという血の繋がらないビリーの可愛い弟は、その見かけとは裏腹に突然とんでもないことをしでかすビリーからすれば理解不能な少年だった。
決して悪い子ではないのだ。とても優しくいい子で、要領もよくビリーに懐いてくれてもいる。
ときたま驚かされるような言動をされたり、多少強引であったりはするけれど、グラハムと過ごす毎日をビリーは確かに楽しんでいたのは事実だ。
グラハムの父とビリーの母が、共に子連れで再婚してからだいぶ経つ。この両親は、仲は良いのだが二人ともがビジネスライクであり、時間が合えばしょっちゅうのように二人でデートをしているが反対に仕事が入れば家にさえ寄り付かなくなってしまう。
互いにそれを承知しての再婚だったから、こんな日が来るのも想像には難くなかったけれど。
まさかグラハムの誕生日に、両親が共に仕事で家に帰れなくなるだなんて。
祝い事となれば全力で楽しみ尽くす義父のジョージと、節目となる日を大切にしようという考えを持つ母のリナが揃えば、誕生日などは格好のイベントのはずだった。
だというのに。
「プレゼント、本当にいいのかい?」
ビリーとグラハムは、四つの椅子に囲まれたダイニングテーブルに二人で座り向かい合っていた。
両親のいない、二人きりの誕生日。主役はグラハム、そして祝う人はビリーだけのささやかなバースデーディナーだった。
料理は昨日のうちにリナが腕によりをかけて作ったものだ。明日は仕事が入っていてお祝いができないから、せめて料理だけでもと、偶然にも同じように休暇を取れたジョージと共にキッチンに立っていた。
どうせ家族が揃うのならば前日でもいいから家族全員で祝ってやればいいのにとビリーは思ったが、グラハムのためを思って『誕生日のディナー』を作る二人に応援の言葉以外をかけることはできなかった。
だからビリーは、ジョージが予約をしてくれたケーキを当日に取りに行く役を引き受けた。
ビリー自身は、グラハムに対してプレゼントを用意していない。自分たちの関係は決して浅くはないが、ビリーはどんなプレゼントでグラハムが喜んでくれるかわからなかったから。
そしてなにより、
『そんなものはいらない。私の誕生日を、共に祝ってくれるならばそれだけで充分だ』
――他ならぬグラハム自身が、そう云ったから。
それゆえに、ビリーはこの日なんの予定も入れず、講義が終わったその足でケーキを引き取りに行き、帰ってからはディナーの準備に勤しんでいたのだ。
けれどいざ夕食の席に到ったときになって、両親の渾身の料理を前に戸惑いを覚えた。今ここにいない両親が、ここにいることができないからこそこれほどまでにグラハムへの愛情を込めているというのに、ここにいる自分がなにもしないというのはどうだろうか、と。
グラハムの前で、グラハムの誕生日をここで祝ってやれる唯一の人間がビリーなのだから、グラハムを喜ばせるなにかをすべきではないのだろうか、と。
そう思ったからこそ出たのが、この問いなのだけれど。
「……私は今、充分に楽しいが?」
グラハムはチキンのソテーを口に運びながら疑問符を浮かべていた。
彼にとっては唐突すぎる問いだったのだろう、不思議そうな顔で、けれど可愛らしく首を傾げていた。
「だって僕はなにもしていないよ。君の誕生日を祝いたいと思う気持ちは僕も変わらないのに」
ビリーがしたことは、全て両親の準備があってこそのものだった。グラハムのために、ビリーが自らしたことはひとつもない。その事実に、行き当たってしまった。
「そうか。……そうだな」
グラハムは不可思議そうな表情でビリーを見つめていたけれど、思いついたように目を瞬かせるとナイフとフォークをゆっくりと置いて皿の手前で緩やかに手を組んだ。
「では、来年もまた私の誕生日を祝ってほしい」
「それだけ?」
「ああ。私にとって君からの祝福は女神のそれ以上に素晴らしく得難いものなのだから」
溢れんばかりの笑顔を浮かべ、ところによれば天使のようだと称されるほどの可愛らしい顔立ちの少年は、今はその愛らしさをビリーにだけ向けていた。
不思議なことに、この美しい弟はビリーのことをどうしてか大層気に入っていた。初めて会ったそのときから、それは自惚れではなく確かな実感としてビリーの中にあった。
「大袈裟だなぁ。誕生日を祝うくらいなら毎年してあげるのに」
理由などはわからない。わかるはずもないのだけれど。
「確かな約束がほしいのだよ」
それでも彼が、鮮やかな笑みの中でもどこか真剣な瞳でビリーにそう云ってくるものだから。
「わかったよ、約束する」
些細な約束事に、どうして躊躇する必要があるだろう。愛しい弟がそう望むのならば、兄として応えてやるのが当然だと思っていた。事実彼の望みは、ビリーにとってそう難しいことでもなかったから。
そうして零れる満面の笑みに、ビリー自身もまた幸せを感じることができるのだから。
その日は、日が沈んでからあとは全てがグラハムにとってのプレゼントだった。
もちろんビリーは知るはずがない。このディナータイムそのものが、グラハムが両親にねだったプレゼントだということを。
渾身のバースデーディナーを作り上げていった両親は、今頃デートを満喫していることだろう。
ギブアンドテイクというものだ、決して難しい話ではない。互いに愛しい人と過ごす時間が欲しかった、ただそれだけのことだ。
「プレゼント、本当にいいのかい?」
そんなことを露とも知らないグラハムの愛しい義兄が、悩める顔でそんなことを云ってきたときには天にも昇る気持ちだった。
――あなたの存在そのものが自分にとってのプレゼントだ、なんて。
そう伝えられるほどに機は熟していない。まだその時期ではないことは、グラハムが一番よくわかっていた。
「だって僕はなにもしていないよ。君の誕生日を祝いたいと思う気持ちは僕も変わらないのに」
ビリーはなにもわかっていない。グラハムとジョージがよく似た親子だと指摘しながらも、その実本質を捉えきれていない。
けれども、まあ、それこそがビリーだと思えば抜けた様さえ可愛らしく映ってしまうのだから不思議なものだ。
グラハムと父のジョージはよく似ている。不本意ながら、それはグラハムの長くはない人生からしても認めざるを得ないものだった。
しかし、似ていても決して同じではない。
だからこそ、ジョージはリナに、グラハムはビリーに心を奪われた。グラハムとしてはリナのことは女性として好ましいと思っているが、それでもグラハムが惹かれたのはビリーに他ならないのだから。
「では、来年もまた私の誕生日を祝ってほしい」
「それだけ?」
「ああ。私にとって君からの祝福は女神のそれ以上に素晴らしく得難いものなのだから」
ビリーは一瞬だけ呆けたような顔して、すぐに照れたように微笑んだ。
ああ、そんなほんの僅かな表情の変化さえ、抱きしめたくなるほどに愛らしいというのに。
「大袈裟だなぁ。誕生日を祝うくらいなら毎年してあげるのに」
それでもビリーにとって、グラハムは仲の良い義理の弟であることに他ならなかった。気を許してくれてはいるが、あくまでそれは家族であり兄弟である以上のものではなかったけれど。
「確かな約束がほしいのだよ」
いいのだ、今はまだ。
彼の可愛い弟であるということ。今のこの位置自体には満足しているが、現状に甘んじるつもりはない。
いつか奪ってみせる。彼の隣を、自分だけの特別な場所を。そして、彼の全てを。
「わかったよ、約束する」
その笑顔がいつしか自分だけに向けられる特別な意味を含むように。
願いを込めるように、祈るように、グラハムは彼の眼を真っ直ぐに見据えて微笑んだ。
この一瞬から、少しずつでいい、彼の心を自分だけのものとするために。
誕生日なのに関係としては進み始めでごめんねグラハム!(笑)
でもこの人らはなんか勝手に幸せになってくれそうなイメージなので気楽に書けてほんと楽しいです。
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