新幹線の中でひたすらぽつぽつ携帯に打っておりました。今年初めてのネタが義兄弟グラビリってどうなんだろう…と思いつつも、まあ楽しいのでよし。
グラハム父子×ビリー母子設定はこんな感じで進んでいくと思われます。
グラハム父子×ビリー母子設定はこんな感じで進んでいくと思われます。
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「あら、あなたは反対?」
母リナにそう問われたのは、ビリーが母の再婚相手とその息子と顔を合わせたまさに当日の夜だった。
なぜか楽しげな母の真意などビリーにわかろうはずもない。
しかも彼女はビリーが嫌なら再婚をやめてもいい、などと嘯くのだ。
思いもかけないリナの言葉に、ビリーは信じられないもの見たような気がした。
そんな顔をした覚えはないのだが、まさかリナにはそう見えてしまったのだろうか。
「反対ではないけど……なんていうのかな、彼は、少しだけ……」
「少しだけ?」
思ったことをそのまま口にしていいものか迷う。この母のことだから、大丈夫だろうとは思うのだけれど。
「……あの人に、似ているような気がする」
決死の呟きは、しかし予想外の反応に裏切られることとなる。
「あはははは!」
弾けるような笑いに、ビリーは驚いて目を見開いた。
「そうね確かに、あなたの云うこともわかるわよ、ビリー」
ひとしきり笑い、涙まで滲んだ目元を拭いながら、リナはようやく正面からビリーを見た。
「ああいう人だもの、私だって最初は毛嫌いしていたわ」
ジョージの快活な様に、どうしても思い出してしまう人がいる。
思い出したいわけではない。――出来るなら、二度と顔も見たくはないほどの。
「でもね、あの人はオスカーとは違う」
ああ、とビリーは目を細めた。
ビリーだけの思い違いではなかった。やはり母も、そうなのだ。
オスカーとはビリーの実父の名だ。つまりそれは、リナの前の夫の名でもある。
口先だけは立派ながらまともな職にも就かず、リナの稼ぎにばかり頼っていた仕様のない男。彼にリナが三行半を叩きつけ、裁判でビリーの親権と可能な限りの慰謝料をふんだくったのは今から十年近く前のことだ。
「オスカーは、それこそ顔が良くて口が巧いだけのバカだったけど、ジョージは同じバカみたいなテンションでも頭は悪くないわ」
微笑む母に、女性の強さを見た。
生半可なことで折れるような人ではなかったが、それでも彼女は、傷ついた女性に違いなかったというのに。
「なにより、どれだけ馬鹿にしても私に喰らいついてきた。――その根性だけでも、認めてあげて?」
「……」
「あなたがああいうタイプを苦手にしているのはわかるわ。だけど、」
「……いいよ、母さん」
遮る言葉に、わずかに不安げな色を見せるリナは、まるで恋する少女のようだ。
頼もしかった母のこんな可愛らしい姿を見るのは初めてだけれど、そんな母こそがビリーはなによりも愛おしい。
「僕はあの人が嫌いじゃないし、なにより母さんが決めた結婚だろう? 僕はそれに反対しようなんて最初から思ってないよ」
「ビリー……」
男になんて頼らないと豪語していたリナが、ようやく見つけたパートナーだ。
前の夫と似ていながらも全く異なるところは、なにも収入の多さだけではない。
一度顔を合わせただけのビリーにもわかったのだ。彼がどれほど母を愛し、大切に大切に想っているかということを。そして、
「――母さんがどれだけ彼にメロメロなのかもわかったしね」
「ビリー!」
声を荒げても、そこにいつもの迫力はない。照れ隠しというやつだ。
単純ながら楽しみだとビリーは思う。母の愛したジョージと、その息子グラハムとは近々一緒に暮らすことになるのだ。
ビジネスライクなジョージとリナは、なんだかんだで結婚生活などそっちのけで仕事に忙殺されるに違いないが、揃ったときにはきっと賑やかなことになるだろう。新しい弟のグラハムも明るく素直な子のようだし、仲良くやっていけるだろう。
彼らとの新たな生活はビリーに明るい未来を想い描かせ、胸を踊らせる理由とするは充分すぎるものだった。
しかしビリーはまだ知らない。
希望を抱いた新たな生活、そこに天使の顔をした甘い罠が張り巡らされていることを。
――そしてその罠から逃れる最後の術を、この日ビリー自身が消してしまったのだということを。
……親世代好きすぎてごめんなさい(笑) つ、次こそグラビリ揃えたいです…!
「あら、あなたは反対?」
母リナにそう問われたのは、ビリーが母の再婚相手とその息子と顔を合わせたまさに当日の夜だった。
なぜか楽しげな母の真意などビリーにわかろうはずもない。
しかも彼女はビリーが嫌なら再婚をやめてもいい、などと嘯くのだ。
思いもかけないリナの言葉に、ビリーは信じられないもの見たような気がした。
そんな顔をした覚えはないのだが、まさかリナにはそう見えてしまったのだろうか。
「反対ではないけど……なんていうのかな、彼は、少しだけ……」
「少しだけ?」
思ったことをそのまま口にしていいものか迷う。この母のことだから、大丈夫だろうとは思うのだけれど。
「……あの人に、似ているような気がする」
決死の呟きは、しかし予想外の反応に裏切られることとなる。
「あはははは!」
弾けるような笑いに、ビリーは驚いて目を見開いた。
「そうね確かに、あなたの云うこともわかるわよ、ビリー」
ひとしきり笑い、涙まで滲んだ目元を拭いながら、リナはようやく正面からビリーを見た。
「ああいう人だもの、私だって最初は毛嫌いしていたわ」
ジョージの快活な様に、どうしても思い出してしまう人がいる。
思い出したいわけではない。――出来るなら、二度と顔も見たくはないほどの。
「でもね、あの人はオスカーとは違う」
ああ、とビリーは目を細めた。
ビリーだけの思い違いではなかった。やはり母も、そうなのだ。
オスカーとはビリーの実父の名だ。つまりそれは、リナの前の夫の名でもある。
口先だけは立派ながらまともな職にも就かず、リナの稼ぎにばかり頼っていた仕様のない男。彼にリナが三行半を叩きつけ、裁判でビリーの親権と可能な限りの慰謝料をふんだくったのは今から十年近く前のことだ。
「オスカーは、それこそ顔が良くて口が巧いだけのバカだったけど、ジョージは同じバカみたいなテンションでも頭は悪くないわ」
微笑む母に、女性の強さを見た。
生半可なことで折れるような人ではなかったが、それでも彼女は、傷ついた女性に違いなかったというのに。
「なにより、どれだけ馬鹿にしても私に喰らいついてきた。――その根性だけでも、認めてあげて?」
「……」
「あなたがああいうタイプを苦手にしているのはわかるわ。だけど、」
「……いいよ、母さん」
遮る言葉に、わずかに不安げな色を見せるリナは、まるで恋する少女のようだ。
頼もしかった母のこんな可愛らしい姿を見るのは初めてだけれど、そんな母こそがビリーはなによりも愛おしい。
「僕はあの人が嫌いじゃないし、なにより母さんが決めた結婚だろう? 僕はそれに反対しようなんて最初から思ってないよ」
「ビリー……」
男になんて頼らないと豪語していたリナが、ようやく見つけたパートナーだ。
前の夫と似ていながらも全く異なるところは、なにも収入の多さだけではない。
一度顔を合わせただけのビリーにもわかったのだ。彼がどれほど母を愛し、大切に大切に想っているかということを。そして、
「――母さんがどれだけ彼にメロメロなのかもわかったしね」
「ビリー!」
声を荒げても、そこにいつもの迫力はない。照れ隠しというやつだ。
単純ながら楽しみだとビリーは思う。母の愛したジョージと、その息子グラハムとは近々一緒に暮らすことになるのだ。
ビジネスライクなジョージとリナは、なんだかんだで結婚生活などそっちのけで仕事に忙殺されるに違いないが、揃ったときにはきっと賑やかなことになるだろう。新しい弟のグラハムも明るく素直な子のようだし、仲良くやっていけるだろう。
彼らとの新たな生活はビリーに明るい未来を想い描かせ、胸を踊らせる理由とするは充分すぎるものだった。
しかしビリーはまだ知らない。
希望を抱いた新たな生活、そこに天使の顔をした甘い罠が張り巡らされていることを。
――そしてその罠から逃れる最後の術を、この日ビリー自身が消してしまったのだということを。
……親世代好きすぎてごめんなさい(笑) つ、次こそグラビリ揃えたいです…!
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