似たような容姿と、似て非なる過去を持つ攻パイロット二人を夢の世界で逢わせてみた。多分続きませんが、同じパターンで全くの正反対な受っ子二人の会話は書いてみたいなー。
*
「……なんだこれ」
ふいに響いた声は、自分のものではなかった。驚いたのは、予期していなかった場所から声が聞こえたことではなく、自分が今しがた考えていた全く同じ言葉が耳に飛び込んできたことだ。
口を開いていないのに声を出していたのかと、一瞬であっても本気で思えてしまうほどに。
「君は誰だ」
振り返った先には、金髪の男。おそらくは同じ人種だろうと思える肌と髪の色をした、年の頃も同じほどと思える男がいた。
鍛え抜かれた身体と、瞳の奥に隠れる鋭さ、そしてなによりも纏う服から彼が軍人であるとすぐに知れた。
それでも不思議に思うのは、彼の軍服がグラハムの知るどの軍のものでもなかったからだ。左腕にエンブレムのようなものが見えるから、小国かもしくは私的な組織の制服だろうか。
「俺が誰かってのより、今はここがどこかを考えるのが先じゃないのか?」
そんなことはないだろう、と口にしようとも考えたが、確かにこんな理解不能な場所で不毛な会話をする意味はない。どうにも軽い相手のペースに乗せられているようでどことなく悔しく思いながら、グラハムは周囲を見回した。
不思議な空間、だった。
なにもなければなに見えない。かといって闇や光の中というわけでもなく、なにかが見えているようでいて見えたと思うものもすぐに形を変えていく。
床も見えない場所で、隣に立つ男と目線を同じくしていることが奇跡のように思えた。
「まるで夢のようだな」
「……っていうより、夢の中、なんじゃない?」
茶化したような物言いがどうにも気にかかり彼を一瞥すると、グラハムの反応に驚いたような顔をした男は睨むなよ、と笑う。
「そんな顔すんなって。イイ男が台無しだぜ?」
「生憎だがこの顔は生まれつきだ」
「だろうねぇ」
納得したように返されるが、人によってはその言葉も嫌味に響くだろう。金の髪に青の瞳を持つ彼もまた、若い俳優のような顔立ちをしていた。
格別目立つ顔というわけではない。が、どうしてだろう雑に見える立ち居振る舞いに、わずかながらに優雅な様が垣間見えると思うのは。
「しっかしまあ、ここが夢だとして、これからどうする?」
「どう、とは?」
男はやれやれと云わんばかりの顔でグラハムを見やる。彼の云いたいことはグラハムももちろんわかっている。わかっている、が。
「どうやったら夢から醒めるかってことだ。勝手に目が覚めるならそれを待ってもいいけど」
「……醒めないこともありえる、か」
「どうかねぇ」
本気なのかどうなのか、やる気のなさそうな声にグラハムは彼との会話に真剣に望むことを早々に諦めた。最初に言葉を交わしたときから感じていたことではあるが、どうにも彼とは気が合いそうにない。
「なんということだ。ようやく機体の整備も終わったところだというのに」
「あんた、空軍の人間か?」
「……私は、ユニオン軍MSWAD所属だ」
「ユニ、オン……?」
男の様子が変化する。怪訝な表情でグラハムの言葉を反芻するように呟く男の姿に、グラハムもまた眉を寄せた。
知らないのだろうか、この男は。MSWADはともかくとしても、ユニオン軍を知らないものがどうして軍服を纏えるというのだろう。
「正式名称は、ユニオン軍直属アメリカ軍第一航空戦術飛行隊だ」
今度こそ明確に男の表情が変わった。けれど次の瞬間、男はわざとらしく声を出して溜息をつくと、頭をかきながら横を向く。
「なんてこった。これじゃあ本物の夢物語だ」
「なにを云っている?」
「出逢うはずのない人間が存在しないはずの場所で出逢うっていうあれだよ。まあ、ようはさ。――地球連合軍第7機動艦隊」
聞き慣れない言葉の羅列にグラハムは首を傾げた。地球連邦軍などという大それた組織の名は聞いたことがない。この男が嘘を云っているとも思えず、だというならつまり。
「俺の所属だ。な、聞いたことないだろ?」
にやりと笑う男に、グラハムは今度こそ絶句した。
そういえばこの二人には、「のちの仮面キャラである」という共通点があったのでした…
「……なんだこれ」
ふいに響いた声は、自分のものではなかった。驚いたのは、予期していなかった場所から声が聞こえたことではなく、自分が今しがた考えていた全く同じ言葉が耳に飛び込んできたことだ。
口を開いていないのに声を出していたのかと、一瞬であっても本気で思えてしまうほどに。
「君は誰だ」
振り返った先には、金髪の男。おそらくは同じ人種だろうと思える肌と髪の色をした、年の頃も同じほどと思える男がいた。
鍛え抜かれた身体と、瞳の奥に隠れる鋭さ、そしてなによりも纏う服から彼が軍人であるとすぐに知れた。
それでも不思議に思うのは、彼の軍服がグラハムの知るどの軍のものでもなかったからだ。左腕にエンブレムのようなものが見えるから、小国かもしくは私的な組織の制服だろうか。
「俺が誰かってのより、今はここがどこかを考えるのが先じゃないのか?」
そんなことはないだろう、と口にしようとも考えたが、確かにこんな理解不能な場所で不毛な会話をする意味はない。どうにも軽い相手のペースに乗せられているようでどことなく悔しく思いながら、グラハムは周囲を見回した。
不思議な空間、だった。
なにもなければなに見えない。かといって闇や光の中というわけでもなく、なにかが見えているようでいて見えたと思うものもすぐに形を変えていく。
床も見えない場所で、隣に立つ男と目線を同じくしていることが奇跡のように思えた。
「まるで夢のようだな」
「……っていうより、夢の中、なんじゃない?」
茶化したような物言いがどうにも気にかかり彼を一瞥すると、グラハムの反応に驚いたような顔をした男は睨むなよ、と笑う。
「そんな顔すんなって。イイ男が台無しだぜ?」
「生憎だがこの顔は生まれつきだ」
「だろうねぇ」
納得したように返されるが、人によってはその言葉も嫌味に響くだろう。金の髪に青の瞳を持つ彼もまた、若い俳優のような顔立ちをしていた。
格別目立つ顔というわけではない。が、どうしてだろう雑に見える立ち居振る舞いに、わずかながらに優雅な様が垣間見えると思うのは。
「しっかしまあ、ここが夢だとして、これからどうする?」
「どう、とは?」
男はやれやれと云わんばかりの顔でグラハムを見やる。彼の云いたいことはグラハムももちろんわかっている。わかっている、が。
「どうやったら夢から醒めるかってことだ。勝手に目が覚めるならそれを待ってもいいけど」
「……醒めないこともありえる、か」
「どうかねぇ」
本気なのかどうなのか、やる気のなさそうな声にグラハムは彼との会話に真剣に望むことを早々に諦めた。最初に言葉を交わしたときから感じていたことではあるが、どうにも彼とは気が合いそうにない。
「なんということだ。ようやく機体の整備も終わったところだというのに」
「あんた、空軍の人間か?」
「……私は、ユニオン軍MSWAD所属だ」
「ユニ、オン……?」
男の様子が変化する。怪訝な表情でグラハムの言葉を反芻するように呟く男の姿に、グラハムもまた眉を寄せた。
知らないのだろうか、この男は。MSWADはともかくとしても、ユニオン軍を知らないものがどうして軍服を纏えるというのだろう。
「正式名称は、ユニオン軍直属アメリカ軍第一航空戦術飛行隊だ」
今度こそ明確に男の表情が変わった。けれど次の瞬間、男はわざとらしく声を出して溜息をつくと、頭をかきながら横を向く。
「なんてこった。これじゃあ本物の夢物語だ」
「なにを云っている?」
「出逢うはずのない人間が存在しないはずの場所で出逢うっていうあれだよ。まあ、ようはさ。――地球連合軍第7機動艦隊」
聞き慣れない言葉の羅列にグラハムは首を傾げた。地球連邦軍などという大それた組織の名は聞いたことがない。この男が嘘を云っているとも思えず、だというならつまり。
「俺の所属だ。な、聞いたことないだろ?」
にやりと笑う男に、グラハムは今度こそ絶句した。
そういえばこの二人には、「のちの仮面キャラである」という共通点があったのでした…
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